大学受験 日本史ゼミ
<日本史で大学受験を考える高校生、受験日本史を教える講師へおくる>
担当は 京都種智院大学教授:向井啓二先生です。

目   次
【No.1〜No.4】
著作権は放棄しておりません。
はじめに の部分に記載の通り、ご利用方法は自由ですが、コピペはしないで下さいね。
ご感想等は下記アドレスまでお願い致します。

NO. 1
DATE 8・4
はじめに  〜日本史ゼミ開講にあたって〜
第1回 原始
第2回 大和政権の時代
第3回 大化の改新前後の時代
第4回 律令国家の形成
第5回 奈良時代の政治・経済
第6回 平安時代の政治・経済
第7回 古代から中世への移行期
第8回 鎌倉幕府の成立
第9回 鎌倉時代の社会・外交
第10回 室町幕府の成立
第11回 室町時代の社会・経済
第12回 戦国時代
第13回 天下統一の時代

























































NO. 2
DATE 8・4
第14回 江戸幕府の誕生
第15回 江戸初期の外交・鎖国
第16回 武断政治から文治政治へ
第17回 江戸時代の経済・社会
第18回 享保・寛政の改革
第19回 列強の接近・天保の改革
第20回 江戸幕府の解体
第21回 明治維新政府の改革
第22回 大日本帝国憲法の制定
第23回 資本主義の発達
第24回 日清・日露戦争
第25回 大正期の動向
第26回 恐慌下の日本
  左下へ続く


NO. 3
DATE 8・4
  右上から続く
第27回 満州事変と日本
第28回 日中全面戦争の開始
第29回 アジア太平洋戦争
第30回 占領下の日本
第31回 冷戦の開始と講和
第32回 現代日本の動向
 以上、32回
☆ 日本文化史 と 番外編
日本文化史 その1 【古代】
日本文化史 その2 【中世】
日本文化史 その3 【近世】
日本文化史 その4 【近現代】
番外編1 会ってみたい人・みたかった人

























































NO. 4
DATE 8・4
☆ 日本史の教科書をじっくりと読む(1)
教科書を読むということ その1
教科書を読むということ その2
教科書を読むということ その3
教科書を読むということ その4
教科書を読むということ その5
教科書を読むということ その6
☆ 日本史の教科書をじっくりと読む(2)
別の教科書も読んでみる その1
 
 
 
 
 



 
〜 はじめに 〜
 
日本史ゼミ開講にあたって 〜イントロダクションをかねて〜
1. 私事にわたること
 今回、ふとしたことからこれまで私の仕事部屋に埋もれたままになっていた予備校講師時代の原稿をホームページで公開することにした。その理由は、本当に偶然のことである。現在の仕事(大学教員)の関係上必要な事柄を調べるためネット検索をしていた際、高校公民科のある科目のホームページに検索事項がヒットし、そのホームページの内容が充実していたことを知ったことによる。

 これから私が公開しようとするものが、このホームページに記された内容より優れているなどと言いたいのではない。そうではなく、かつて予備校の生徒たちと授業で、悪戦苦闘しつつ、何度も改訂し直したあの原稿もひょっとすると何かの役にたつかも知れないと思い立っただけである。だから、元同業者や高校の先生方が「不幸にも」このページを開き、使えると思ったなら、どうぞご自由にご利用ください、というシロモノである。「門外不出」、「秘伝中の秘伝」でもなんでもない。最低限のルールとして右クリックして貼り付けするということだけは避けて欲しいが。このページの内容が利用できるのならどうぞ、というものである。

 私にすれば、もうずいぶん長い間利用されず、私の仕事場の引き出し式のロッカーの中で眠り続けていた原稿を目覚めさせ、誰かの役にたたせることが可能ならば、ぜひ、やってみたいものだと考えただけである。現在も『○○の実況中継』なる参考書が発売されており、それはそれで優れたものが多いことも理解している。特に世界史の『実況中継』の中で、『世界文化史』の巻などその手際よいまとめ方、解説の仕方に感心したし、学ばせてもらったことも事実である。生徒向けに発売されているそうした書籍にはとうてい及ばないが、私のものは私のものとしてお読みいただければ嬉しい限りである。

 私が予備校という場を離れてもう10年以上経過する。その間に大学だけでなく受験をめぐる環境は大きく変わっていった。何より受験生の方が、大学が募集する人数より少なくなる事態を誰が現実のものになると想像していただろうか。一方で、大学入試センター試験受験生が55万人ほどになるということも。

 別の言い方をすれば、大学受験、しかも教科型試験の中に日本史は含まれ、実施されているが、旧来のような選別の材料として果たしてその存在意義があるか、と考えれば、いささか疑問視されるところとなろう。それでいながらも、日本史や世界史という科目は高校地歴科の科目として現在も授業がなされている。それは何故なのか、受験とは無関係の本来の意味を問われているのではなかろうか。とすれば、受験生であるかそうでないかに関係なく、日本史を学ぶ際の一つの道具として利用していただくのも良いかも知れないと考えたのである。しかも、インターネットの世界は、意外に利用されているようで、私が別のホームページに掲載している「埋め草」程度の内容でも、割合読まれているようで、
そうした発表の仕方もあるのだ、と思ってのことである。
 
2. 歴史を学ぶということ
 受験では特に、日本史や世界史はいわゆる暗記科目として理解され、嫌われる。そもそも歴史を学ぶということはどういう意味があるのだろうか。高校ではすでに世界史が必修になっていて、日本史はそうではない。このことを改めて考えてみると、日本を取り巻く環境の変化に伴って必修科目として設定されていることに気づく。グローバル化した現在の国際環境の中で、日本以外の国の文化、その歴史を知ることは、異文化理解をする上で必要なことであり、世界史は国際関係史の基礎的知識をなすと言える。一方、日本史はどうだろう。世界史という大きなグラウンドの中に含み込まれる日本史であるが、ある国民が自国の歴史を理解することなく――それを基礎とせず、と言い換えても良い――他の国のあるいは、他の地域の歴史を理解することは難しい。

 私は何も、国民国家という枠組みからの理解から、このことを述べているわけではないし、一部の「物語としての歴史(日本史)」を強調して止まない人々の考えに共鳴しているわけでもない。日本史はかつて「国史」とよばれ――現在でもその名称で学科名にしている大学もあるが――ていた。しかし、現在では、世界史に対する日本史、あるいは世界史の中の日本史という意味で、さらには、「自国史」という意味で、私が住む国の歩み(歴史)をきちんと知りつつ、他国・他地域の歴史を理解することが必要だと考えている。

 「自国史」として日本史はたとえて言えば、「自分」というものに相当するのかも知れない。「自分」とは何か、ということを理解しようとしてもそう簡単に自分自身で理解することは困難なだということを認めながらも、自分の住む日本という国や日本の各地域を、時間軸を通して理解しようと努めながら、一方で「他人」としての世界史を理解しようとすることは、「自己」を通じて「他者」を理解しようとすることに繋がるのでないか、と考える。しかし、こう考えた時、「自国史」としての日本史、「他者」理解のための世界史を学ぶために設定された授業時間数はあまりに少ない。少なすぎるとも思う。教える側の教員もかなりの努力が必要だが、聞いている生徒・学生たちも大変であろう。よほどの覚悟が必要となる。せめて、2年間分の授業時間数があれば、と思う。そこで、日本史Aなる科目が設定された。近現代史重視の科目である。しかし、近現代史重視の必要性を理解しても、何故、そこの部分だけを切り離し学ぶのかの説明は生徒たちにはなされず、ただ脈絡なく、ある日突然に明治維新が開始されるという全くもって奇妙な科目という他ない。

 まとめよう。歴史、なかでも日本史を学ぶことは、日本に住む人々――日本国籍を持つか否かは問わない――としてその国、その住む場所としての国や文化の成り立ちを知る上で必要なことだ。大学でも同じことである。文学部史学科でなければ、日本史の史料や各時代のことを専門に学ぶことがなく、「日本史概説」などの科目名で教養科目の一つとして学ぶことになるが、一体それを学んでどうなるのか、大して役に立たない科目と思われる

 ことが多い。だが、教養科目とは本来そういう「宿命」を背負っている。学んだからすぐに役立つものではないが、ある国の(日本のでも良い)社会や文化を理解しようとする際にきっと役立つことになる。即効性はないが、ある国や地域の歴史を学ぶことは、そこに住む人々の、そして社会や文化を理解する上で役立つことになるだろう。

 ここでは、高校日本史Bに相当する内容を、私が予備校講師の時に作成した原稿を元に一部改訂を加え、紹介していくことにする。全体でおよそ30回程度の内容であり、取り上げる時期や内容によって長短があると了解して欲しい。さらに、これに加え、以前その一部を発表したことがあるが、大学でも扱っているテーマ史のいくつかを整理し、改訂し直して、改めて掲載することにしたい。ただ、こちらのテーマ史については、すでに掲載した経験もあり、必要に応じて、ということで、あくまでも予定として、30回程度のページアップが終了した後に、改めてどうするかを考えることにしたい。