第1話:パレスチナ問題って何だ?
〜その1〜

 今月から、このコーナーを担当します。よろしくお願いします。

 早速ですが、パレスチナってどこにあるかご存じですか?  日本からずっと西、中東とよばれる地域にあります。
 地図帳か地球儀を持っていれば一度探してみてください。ヨーロッパとアフリカに挟まれたところに地中海っていう海がありますね。その地中海の東海岸のまさに、アジア・アフリカ・ヨーロッパ大陸の接点ともいうべき場所で、現在イスラエルという国がある地域の名称です。

 イスラエルという国は、今から約50年前にできたまだ新しい国なのですが、建国以来、この場所では何度も何度も戦争が繰り返されてきました。

 これを『中東戦争』といいます。

 なぜこんな戦争が続くのかというと、イスラエルが建国されるまでは、この場所は1000年以上も前からアラブの人たち(=パレスチナ人)が多く住んでいたところだったのです。

 そこに突然イスラエルというユダヤの人たちの国ができたことで、アラブとユダヤの二つの民族の間に激しい対立が起こりました。


 これが戦争のきっかけとなったのです。
 
 戦いはだいたいイスラエルが優勢で、パレスチナ人の住む土地を占領してしまいました。

 もちろん、パレスチナ人のほうも黙って見ているわけではありません。各地で爆弾を使ったテロ行動を起こし、イスラエルの支配に抵抗してきました。

 ところが、この50年にも及ぶ流血の歴史を終わらせるチャンスがおとずれました。1993年にイスラエルとパレスチナの代表が話し合い、今までの敵対関係を改めて、和平を実現することを約束したのです。これを「オスロ合意」といいます。


 その結果、イスラエルはそれまでに占領してきたパレスチナの土地を徐々に返していくことになりました。

 しかし、最初はうまく進んでいくかと思われたこの約束も、いろいろな問題がでてきて再び両者の対立が激しくなってきたのです。

 特に今年になってから、この対立はエスカレートしていく一方で、今私がこれを書いている最中にも、「イスラエル・パレスチナの両方に死者が出た」というニュースがテレビから流れてきました。
下手をすれば、また両者の全面戦争(第五次中東戦争)にもなりかねないところまできています。

 皆さんがもし「戦争になったとしても、ずっと西の遠い国のことだから関係ない」なんて思っているとしたら、それは大きな誤りです。中東は石油という大きな資源を抱えている場所です。もし大きな戦争になれば、石油の値段がハネ上がるなど、世界の経済に与える影響は大きいでしょう。

 こういうことは、今から約25年前と20年前にも起きているのです。いわゆるオイルショックというやつです。当時は日本でも、トイレットペーパーや洗剤が買えなくなったり、物価が高騰するなどパニック現象が起こりました。


 この両民族の対立の原因は、表向きにはさっきも言ったように領土の取り合いなのですが、その根っこにあるものは宗教の対立です。

 パレスチナには、エルサレムという町があります。今はイスラエルが占領していますが、この町はユダヤ教、キリスト教、イスラム教という3つの宗教の聖地とされているところなのです。

 しかもややこしいことに、ユダヤ教徒(=イスラエル人、つまりユダヤ人)にとって最も重要な聖なる建物に「嘆きの壁」というものがあり、その壁の向こう側にはイスラム教徒(=パレスチナ人)にとってとても大事な神殿があるのです。壁一つをはさんで、2つの宗教の聖地がくっつくように並び立っている訳です。このことも問題をより難しくしている理由です。

 なぜこんなことになっているのでしょうか? また、なぜキリスト教の聖地もここにあるのでしょうか?
 それは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3つは、実はともに一つの神を信仰する兄弟のような関係にあるからです。兄弟でありながら仲が悪いからたまったものではありません。

 この話は日本人にはなかなか理解しにくいものだと思います。これをお話しするためには、少なくとも3000年前の時代に時計の針を
戻さなければなりません。

 「え?3000年前!!」と驚いた人もいることでしょう。でもこれが世界史なのです。

 次回からは、3000年前からの対立の歴史をシリーズでお送りします。しばらく辛抱してつきあってくださいね。では、また。