第4話:地理のおもしろさって?

 地理を学習している皆さん、なかでも受験のために地理を学習している皆さん!!

 「地理」という科目は皆さんにとって、興味のもてる面白い科目でしょうか??


 「地理」と聞いてまず思うこと。国名や首都名、どこで何がとれる、統計の順位などなど、これらをただひたすら覚えさせられる(=丸暗記させられる)科目!というイメージが強いのではないでしょうか。用語や場所を覚えるだけ、これでは面白くも何ともありませんね。

 今回は、ヨーロッパに行かれる方からのメールもありましたので、ヨーロッパの気候を例にして、「こうしたらちょっとは面白いんとちゃうの」とか、「こうしたらちょっとは勉強しやすいやん」という
考え方を私なりに話してみて、「地理」に対する皆さんのイメージを少しでもいいから変えられたらなぁと思います。

 そうなんです、実は「地理」って面白いんですよ。

 
 
POINT1:「何でそうなるのか」を考える
 地理には理屈があります(だって、「地」域の「理」屈ですから)。
 「何でそうなるのか」という理由があります。単に知識を詰め込む(これを世間では「丸暗記」といいます)のではなく、「何でそうなるのか」を理解していくと、受験勉強の「地理」だって、少しは面白くなってくると思います。


【西岸海洋性気候(Cfb)】
 中・高緯度地方の大陸西岸に分布する温帯気候。緯度のわりに冬でも温和で気温の年較差は小さく、降雨も年間を通して安定している。北西ヨーロッパなどに分布。


 という用語があります。北西ヨーロッパの広い範囲に分布する気候ですが、下の表を見て下さい。

都市名 緯度 1月の平均気温 気候区分
ロンドン(イギリス) 51°09’ 3.8℃ 西岸海洋性気候(Cfb)
パ リ(フランス) 49°58’ 3.5℃ 西岸海洋性気候(Cfb)
札 幌 43°03’ −4.6℃ 冷帯湿潤気候(Df)
大 阪 34°41’ 5.5℃ 温暖湿潤気候(Cfa)
(注)50°Nといえば、樺太(サハリン)中部やカムチャッカ半島南端付近に相当します。
二宮書店『データブックオブザワールド』より
 
ヨーロッパは位置的に、北海道(気候区分では冷帯に分類されます)よりもはるかに北(高緯度)側に位置しているにも関わらず、冬の気温はマイナスまで下がらず、温帯の西岸海洋性気候になっています。どうしてでしょうか?

 ヨーロッパの沿岸部には暖流の北大西洋海流が流れています。

 また、大西洋上から
偏西風が年間を通じて吹いており、常に暖流上の暖気が運ばれてくるため、1月でも気温はそれほど下がりません。

 さらに、北西ヨーロッパは、北ドイツ平原や東ヨーロッパ平原などの標高200m未満の低平な地形が広がっているため、偏西風をさえぎる地形的な障害がほとんどなく、内陸部までの広い範囲が温帯(西岸海洋性気候)となっているのです。

 同時に偏西風は海からの湿った大気を常に運んでくるため、ヨーロッパでは年間を通して平均的な降雨がもたらされます。
 
 
 
POINT2:さまざまな事項を「つなげる」(=関連させながら整理する)。
 「地理」にはさまざまな分野の事柄が必ず関連しています。例えば、農業には気候が深く関係しますし、交通には地形が関係することもあるんですよ。

 「これがわかれば、あれもわかる」というつながりを発見できると、受験勉強の「地理」はますます面白くなってくると思います。

西岸海洋性気候は北西ヨーロッパに広く分布。
偏西風の影響で年間を通して平均した降雨がもたらされる。

北西ヨーロッパを流れる河川の流量は年間を通して安定
ヨーロッパ中部は標高200m未満の低平な地形が広がる。

北西ヨーロッパを流れる河川の勾配はゆるやか。
○古くから河川交通が発達。それにともない運河の発達が見られる。(例)ミッテルラント運河、マルヌ・ライン運河など
○交通の要地である河川沿いや河口部に大都市が形成される。(例)ロンドン(テムズ川)、パリ(セーヌ川)など。


 覚えたことを忘れてしまうことは誰にだってあります。

 
「どうしたら忘れないのか」を考えてみたとき、何でそうなるのかを理解しておけば、単に丸暗記をしているより、はるかに忘れにくくなると思います。
 
 
「どうしたら思い出せるか」を考えてみたとき、さまざまな事項をつなげておけば、バラバラに丸暗記しているより、はるかに思い出しやすいのではないかと思います。


 そして何よりも、「何や、そうやったんか!」という発見を積み重ねることによって「地理」が面白くなってくれば、これに勝るものはありません。

 受験生の皆さん、地理を学習しているすべての皆さん、頑張って下さい!