第5話:イスラム教の生活習慣

 あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。
 今年のお正月、皆さんはどのようにお過ごしになられましたか?

 私は予備校講師という仕事柄、受験生にとって入試前の大切なこの時期、冬期講習会などが入るため、残念ながらゆっくりとお正月気分に浸ることはできません。そんななか、ほぼ一年ぶりぐらいでしょうか、バングラデシュの友人から電話がかかってきて、少しでしたが話す機会がありました。

 バングラデシュは全人口の85%がイスラム教徒の国で、私の友人も非常に熱心なイスラム教の信者です。彼と出会ってから、いろいろとイスラム教のことを教えてもらいましたが、日本の文化とは全く異なった興味深い生活習慣がいくつかあります。

 今回は、このHPの「驚き世界の歴史」にもよく出てくるイスラム教、そのさまざまな生活習慣について述べてみたいと思います。
 
 イスラム教は、7世紀に預言者ムハンマド(マホメット)により創始された宗教で(歴史的な背景は「驚き世界の歴史」に詳しく書いてありますので参照して下さい)、聖地は「メッカ」・「メディナ」・「エルサレム」の3つです。

 西アジアから中央アジア(カザフスタン、ウズベキスタンなど)、北アフリカ(エジプト、リビア、アルジェリアなど)にかけての乾燥地域や、東南アジアの島嶼部(マレーシアやインドネシアなど)などで広く信仰されており、仏教・キリスト教と並び世界三大宗教の一つに数えられ、信者数は世界中で11億人を超えています。
 
 イスラム教の信者には、唯一の神である「アラー」のみを信じなければいけないこと、聖典「コーラン」に書かれていることの実践(六信五行)などが義務づけられています。

 例えば、一日5回(夜明け前、正午、午後、日没前、夜)の礼拝を行うことや、一生に一度は聖地のメッカに巡礼すること(巡礼を終えた者は「ハッジュ」という称号を持ちます)などがあります。

(右の写真は、神から与えられた黒石を納めるメッカのカーバ神殿に礼拝する人々。)
第一学習社版
「最新地理図表」より
 
 イスラム教に基づく生活習慣にはいろいろありますが、なかでも特徴的なのは食事に関するきびしい戒律でしょう。

 まず、イスラム教にとって豚はけがれた動物とみなされているので、彼らは豚肉を決して食しません。さらに、ソーセージなどの加工食品の中に豚肉が入っているもの、豚の骨(トンコツ)を使ったスープ、豚の脂(ラード)で調理したものなど、これらまでも厳しく制限されます。

 また、食することができる肉は、羊肉・鶏肉・牛肉などですが、これらの肉も好きなように食せるわけではなく、イスラム教徒以外の人が切った動物の肉は食べてはいけない、「アラー」の名を唱えながら頸動脈を切る正式なやり方で殺した動物の肉以外は食べてはいけない、豚肉を切ったことがある包丁で切ってはいけない、豚肉をのせたことがあるお皿を使ってはいけないなどの決まりまであるそうです。
 
 現在インドネシアで起きている事件(調味料の製造過程で豚肉を使用した疑いで、日本の調味料メーカーの現地法人の関係者が逮捕され、製品が回収されている)は、イスラム教徒にとっていかに重大なことかがおわかりいただけると思います。
 また、イスラム教徒はイスラム暦(われわれが使っている1年が365日の太陽暦とは違い、1年が354日)の9月になると、その月は夜明けから日没まで一切の食事と水をとらない断食(「ラマダーン」)を行います。

 なぜこのようなつらいことをするかというと、裕福な人にも貧しい人にも同じ苦しみを与えて、皆平等に「アラー」への信仰を深めるためだそうです。

 そしてイスラム暦の9月が終わり10月1日になると断食明けのお祝いがにぎやかに行われます。この日、彼らは朝早く「モスク」(イスラム教の寺院)に礼拝にいき、そのあとこの日のために用意した晴れ着を着て、家族揃ってごちそうを楽しみます。これは苦しい苦しい断食を守ったごほうびといったところでしょうね。


 いかがですか?世界にはいろいろな生活習慣があります。
 世界中では様々な宗教が信仰されていますが、それぞれが独自の文化・生活習慣を持っています。各宗教ごとに資料集や本などでそれを調べてみるのも面白いかもしれません。